影武者むしゃむしゃ

とある日の夕食、餃子の王将に入りました。
たまに入るお店なんですが、立地が良いためかかなりの人気店であり、夕飯時はいつも5~6人が待っています。
それでも、どうしても食べたくなる日があったりするんですね。

その日、餃子の王将なのに餃子は頼まず、私がオーダーしたのは、
「炒飯セットで」
「炒飯セットですね、お待ち下さい」

そしてさほど時間はかからず、料理を持ってきた店員さん。

 

「お待たせ致しました、焼き飯セットでーす」

やったー、おいしそうな焼き飯セットだ!
よーし食べるぞぉ、いただきま
めしセット!?

え、私が頼んだのは炒飯チャーハンセットのはずでは?

ほら、メニューにも大きな字でしっかり「炒飯セット」と書いてありますよ。
まさかと思ってメニュー全体を再確認しましたが、「焼き飯セット」なるメニューは見当たりませんでした。

しかも不可解なことに、届いた料理はどこからどう見ても炒飯セットです。
写真を撮り忘れたのが痛恨の極みですが、メニューの写真そのまんまでした。
唐揚げ、スープ、棒棒鶏サラダ、杏仁豆腐、そして炒飯…いや、焼き飯と呼ぶべきなのか、しかし寸分違わず「炒飯セット」に見えます。

でも、店員さんは持ってくるとき確かに「焼き飯セット」と言いました。
注文を取ったときは「炒飯セットですね」と確認されましたから、厨房で注文が挿げ変わってしまったことになります。
それも、メニューに載っている炒飯セットと瓜二つの料理に、です。

デートの相手がいつの間にか双子の妹と入れ替わったかのような、攻略難易度の高いイベントに遭遇した私は、レンゲを持ったままその意味を考え込んでしまいました。

いいから早く食えよ

はたして「焼き飯セット」とは何なのか。
その正体を探るため、私は日を改めて、こんなことを試してみました。

オーダーで「焼き飯セット」を頼んでみよう

一週間ほど間を置いて、王将の同じ店舗に入ります。
再度、メニューに隅から隅まで目を通し、「焼き飯セット」がどこにも無いことを確認した上で、こう注文しました。

 

「焼き飯セットで」
「焼き飯セットですね、お待ち下さい」

 

オーダー通りました。

そして、

 

「お待たせ致しました、焼き飯セットです」

焼き飯セットが来ました。

 

これで判明しました。
入店してから、私は「炒飯セット」のチの字も発していません。
私のオーダー、店員さんの返答、そしてご飯の出来上がり、一連のやりとりが全て「焼き飯セット」で完結しています。

ということは!

餃子の王将には、「炒飯セット」とは別に「焼き飯セット」という裏メニューが存在する

ことが証明されたのです!むしゃむしゃ。

いや、言い方の問題だろ

そうなると、この疑問の発端となった、あの出来事を再度考える必要があります。

なぜ、「炒飯セット」を頼んだのに「焼き飯セット」が出てきたのか?

二日目に実験した時は、「焼き飯セット」を頼んで「焼き飯セット」が出てきました。
これはマニュアル通りであり当然の成り行きであり、何の問題もありません。
では、「炒飯セット」で「焼き飯セット」が出てきたあの日は何だったのか?

可能性はいくつか考えられます。

可能性① 何らかの事情で「炒飯セット」が出せない状況だった

想像の域を出ませんが、王将で炒飯セットを作るには、本社から腕を認められて資格を与えられた料理人でないと作れないのではないでしょうか。
フグをさばくには免許が必要ですが、それと同じ原理です。
そして、その認定料理人がボトルキャップチャレンジにハマっていてお店に来なかったため、急遽炒飯セットの影武者である「焼き飯セット」の登場と相成った、というシナリオです。

可能性② 「焼き飯セット」を食べたそうな客だと思われた

たまに、居酒屋でウーロン茶を注文したのにウーロンハイが出てくることがあります。
「この客はいかにも飲みそうだから、ウーロン茶ってことはないだろう」と勝手に解釈されたのだと思われます。
それと同じように、「マニアックなものが好きそうなひねくれ者に見えるから、メニューに載せてない料理の方が欲しいんだろう」と思われた可能性があります。そして当たってます。

可能性③ 知らず知らずのうちに「焼き飯セット」を注文するサインを発していた

実は、王将にはディープなファンしか知らない「焼き飯セットを頼むためのサイン」があるのだという可能性です。サインというか暗号です。
うろ覚えですが、私が「炒飯セットで」と言ったときに、右目のまつげを5本一気に引っこ抜くという動作を無意識のうちにしていたのかもしれません。
それがたまたま、王将の焼き飯暗号に合致してしまったのではないでしょうか?

無意識にそんなことしてたらダメだろ

よし、今後は注文するとき、まつげには絶対手を触れないように気をつけましょう。
いつか「炒飯セット」が食べられると信じて。