寝具ポエム

出張で泊まったホテルの部屋に、このようなアンケートが置いてありました。

これまでいろんなビジネスホテルに泊まりましたが、たいてい同じようなアンケート用紙が用意されています。
どこのホテルも、お客様満足度の向上に励んでおられるということでしょう。

中でも、このホテルは「睡眠特化型」のアンケートです。
他のホテルだと「朝食」や「アメニティ」に関する質問項目があったりするんですが、そこら辺はパーフェクトだから聞く必要がないのだよ、ということでしょうか?
個人的には朝食がイマイチだったんですが、このホテル。

まあそれは置いといて、睡眠特化型だとしても、設問が気になります。

アンケートぐらい素直に答えろよ

問1 寝心地はいかがでしたか
問2 熟睡できましたか

これ、どっちか一問でいいんじゃないでしょうか?
「寝心地がいい」イコール「熟睡できた」ってことでしょ?違います?
「寝心地はいいけど熟睡できなかった」とか、「寝心地は悪いけど熟睡できた」などという奇特なお客さんが存在するんでしょうか?
どう考えても矛盾、

いや、

いるのかもしれません。
むしろ、実際にそういうお客さんがいたからこそ、このホテルは「寝心地」と「熟睡」を分けて質問しているんです。
そうでなければ、二問用意する理由が見当たりませんからね。

よし、今日のテーマはこれにしましょう。

寝心地と熟睡度が一致しない客ってどんな人?

考えてみましょう。

まず、

「寝心地はいいけど熟睡できなかった」お客さん、とはどんな人でしょうか。

きっとその人は、昼間の仕事で疲れ、ベッドに入るなり、

ふぅぉぉぉぉおおおお!
なんだこのベッドは!素ぅ晴らしい!
まるで初夏の入道雲の上に寝転がっているような、いやもちろん初夏の入道雲の上に寝転がったことは無いけれど、それでも初夏の入道雲の上に寝転がっているようなとしか譬えようの無いこの柔らかで暖かい感触!
朝の7時から夜の9時まで、すき家の店内で流れる「すき家RADIO」を丸暗記するという激務をこなし、一言一句聞き逃せないプレッシャーに苛まれつつ神経をすり減らして働いた、この私の肉体的精神的疲労を全て受け止め、一瞬で安らぎに変えてしまう魔力!それはもはや呪術と呼ばねばなるまい!
何より、お前1ベッドのことですよは私のことをどうやって知ったのだ、いや知らないはずは無い、私の体格と寝相を知り尽くしたかのように体にフィットしているではないか!我が背骨が、腰骨が、膝の軟骨が、かつてない快楽に感極まってカルシウムの涙を流している!
そして、世界中を渡り歩き、数千の枕を試してなお安定感というものに出会えなかった私をも満足させる、シンプルながらも頭部を優しく支え、包み込み、虜にする枕!頭蓋骨を吸い付けて離さない強烈な磁力を有しているかのようだ!それはまさに、ベッドの端にひっそりとたたずみ、それでいてベッドと共に極上の夜を演出する無二の相棒!
そうだ、私は今日「快適」という言葉の真なる意味を知ったのだ。
ああ、たかが一泊6,200円(税別)のビジネスホテル、どうせ凡百の寝具だろうと高をくくっていた私を、どうか許してくれたまえ、神よ…うるうる…

…と、あまりの寝心地の良さにアドレナリンのタガが外れ、夜通し感動と興奮が治まらず、ゆえに熟睡できなかったのであった…
なるほど!有り得る!

ないわ

さあ、エンジンがかかってまいりました。
この調子でもう一つ、「寝心地は悪いけど熟睡できた」お客さんも想像してみましょう。
さっきと逆のパターンです。いいですね?

きっとその人は、昼間の仕事で疲れ、ベッドに入るなり、

ぁ痛あッ!

…と、過度な疲労のために足がこむら返りを起こし、激痛で失神してしまい、そのまま朝まで目覚めなかったのであった…
なるほど!有り得る!

それ熟睡ちゃうわ

というわけで、皆さんもこむら返りには気をつけましょう。