お得税

4月下旬、あるきっかけで普段は入らない喫茶店に入ったことから、この話は始まります。

カフェ「ベローチェ」

都内を中心に出店しているチェーン店です。
「ベローチェ」とは、イタリア語で「速い」という意味であり、飲み物はもちろん、ホットドッグ等のフードメニューも迅速に提供されます。
スタバやドトールなどに比べると店舗数がそれほど多くないこともあり、私はあまり入ったことが無かったんですが、モーニングセットのカイザーサンド(上の写真にあるパンのやつ)が出てくる速さには驚きました。

さて、ベローチェでそのセットを頼むと付いてきた、これが本日の話題です。

スクラッチカードです。
2019年4月1日~5月31日にかけて、モーニングセット等の対象メニューを注文すると付いてきます。1つまり、配布は既に終了しています。
スクラッチを削ると「50円引き」または「100円引き」のいずれかが出てきて、クーポン券として利用できるようです。

ハズレが無いので、人をがっかりさせない性格イケメンのカードに見えますが、看過できない一文があります。
スクラッチ部分の下、見えますか?

10円玉で軽くこすってください」

なにっ、10円玉でこすれだと?
冗談じゃない!
そんなことをしたら、摩擦で10円玉がすり減ってしまうではないですか!

どれだけ細かい事気にしてるんだ

ベローチェ側もそういったことを認識しているんでしょう、わざわざ「軽くこすってください」と形容詞を入れています。
しかし、軽くだろうが重くだろうが、こすれ合った物体が全くの無傷でいられるわけがありません。
最低でも50円引きにはなりますよ、と見せかけておいて、実は10円玉という資産を目減りさせるように仕向けているのです!

そんなわけで、今日のテーマはこれしかありません。

スクラッチカードを削った10円玉は、どれだけすり減るのか?

調べましょう。

どこから来るんだその執念

今回は、10円玉がどれだけすり減るのか、実験によって確かめたいと思います。
その実験には、4つのアイテムが必要です。

  1. スクラッチカード
  2. 10円玉
  3. はかり
  4. 手袋

順に説明していきましょう。

1.スクラッチカード

まずは何が無くとも、ベローチェからの挑戦状、もといスクラッチカードが必要です。

私がこのスクラッチカードの存在に気付いたのは、前述の通り4月下旬頃。
そして、ベローチェのキャンペーン期間は5月31日までです。
実験材料が1枚ぽっちでは心もとないので、なるべく多くのスクラッチカードを用意したいところです。

というわけで、5月の一ヶ月間、私は割けるだけの時間と労力を割いてベローチェに通いまくり、

スクラッチカードを15枚集めました。
材料としては十分かと思うんですが、もうベローチェ飽きました。

2.10円玉

次に本件の被害者、スクラッチカードの前に粉と散って頂く10円玉が必要です。
ただし、本物の10円玉は使いません。

なぜなら既に申し上げた通り、本物の10円玉で実験してしまうと、私が金銭的に損をしてしまうためです。
こんなところでベローチェの罠にハマるわけにはいきません。

そこで、材質や形が10円玉に似ているものとして、こんなものを購入しました。

これは何かというと、アクセサリーの台座として使うパーツです。手芸用品店にありました。
本来、ここにレジンを流し込んだりストーンを並べたりしてアクセサリーを作るんですが、今回は10円玉の身代わりとなってすり減って頂きます。

なお、素材は10円玉と同じ銅製です。
厚みは10円玉と比べて薄く、サイズも小さいですが、摩擦による重さの変化を測定するのが目的なので、影響は無いでしょう。

今後、これを10円玉の代わりということで、10円玉βベータと呼ぶことにします。

3.はかり

そして、10円玉βがどれだけすり減ったのか確認するためには、重さを量る必要があります。
すり減る量はほんのわずかであることが予想されるため、本実験ではこちら、

0.001g、すなわち1mg単位で計測できる「電子天秤」を使用します。
amazonにはもっと細かい単位のはかりもあったんですが、それはもう宝石の鑑定などに使うガチ仕様で、iPhoneの最新モデルが買えるような価格だったため、断念しました。

4.手袋

さらに、今回は重さを正確に厳密に計測するため、

終始この手袋をはめて実験します。
ミリグラム単位での計測となると、指紋手垢によって10円玉βの重さが変動してしまうおそれがあるためです。
ベローチェの企みを打ち砕くためには、いかなる妥協も許されません。

実験開始

では、いよいよ実験開始です。
実験のプロセスは以下の通り。

  1. 10円玉βの重さを量る
  2. 10円玉βで、スクラッチカードを1枚削る
  3. 再度、10円玉βの重さを量り、何mg減ったか記録する
  4. スクラッチカードを全て削るまで、2~3を繰り返す
1.10円玉βの重さを量る

まず、初期状態の10円玉βを量ります。

1.23g です。記録しましょう。

2.10円玉βで、スクラッチカードを1枚削る

次に、本実験のメインである、削りの行に入ります。
一部始終をGIFにしてみました。

こんな感じで削っていきます。

それにしても10円玉β、持ちにくいです。
小さいうえに突起もついているため、指に刺さるのを我慢しながら、一生懸命削ります。

削った結果、このスクラッチカードは50円引きでした。
ですが、今回注目すべきは10円玉βの方なので、これはどうでもいいです。

3.再度、10円玉βの重さを量り、何mg減ったか記録する

では、いよいよ計量です。
スクラッチカードを削った後の10円玉βは…

1.228g! 2ミリグラム減ってます!

わずかではありますが、摩擦によって確かに重さが減っている!
これぞ物理の法則であり、自然の摂理であり、大宇宙の神秘なのです!
それを今、東洋の机上で目撃しました!

感動に心を乱されそうになりますが、ここは冷静に、しっかりと重さを記録します。

4.スクラッチカードを全て削るまで、2~3を繰り返す

以降、残り14枚のカード全てに対して、同じことを繰り返しました。
その結果、重さの変遷がこちらです。

削った枚数 10円玉βの重さ(g)
0(初期状態) 1.23
1 1.228
2 1.227
3 1.226
4 1.226
5 1.226
6 1.226
7 1.226
8 1.226
9 1.225
10 1.225
11 1.225
12 1.225
13 1.225
14 1.225
15 1.223

削り方が一定ではないためか、減り方に若干ムラがあるのが気になりますが、それでも最終的には1.223gになりました。
トータルでマイナス7mgです。

ということは、15枚削ってマイナス7mgなので、平均すると、

スクラッチカードを1枚削ると、10円玉βは0.47mg軽くなる

これが実験結果です!

実験結果をもとにシミュレーション

ここまでは、10円玉βによる検証でした。
では、ベローチェに言われるがままに本物の10円玉を使ってしまったら、どういうことになるのでしょうか?

それを確認するため、手元にあった10円玉の重さを量ります。

4.509gです。
この10円玉でスクラッチカードを1枚削ると、10円玉βと同じく、0.47mg軽くなると予想されます。
つまり、元々の重さの約0.01%が塵となって消えてしまうわけです。
金額で言うと、1枚スクラッチカードを削るごとに、りんの損失が発生しているのです!

さらに進めましょう。
その調子でスクラッチカードを削りまくり、枚数が一万枚に達すると、10円玉がまるごと虚空に消えてしまいます!
もし、ベローチェがキャンペーンをやっていた2か月間に一万回入店(毎日欠かさず164回ずつ入店)したアルティメットベローチェマスターがいたとして、その人物が同じ10円玉を使い回して全てのカードを削ったとすると、あわれベローチェの罠によって10円玉は都会のブラックホールに飲み込まれてしまったのです!

アルティメットベローチェマスターの年収がいかほどかはわかりませんが、日々食べていくのがやっとのような苦しい家計だとすると、たとえ10円でも手痛い損失であることは想像に難くありません。

ベローチェ行き過ぎだから貧乏なんだろ

というわけで、私の手元に何が残ったかというと、

ベローチェのクーポン券が15枚。

有効期限は6月14日まで、しかも一度に二枚以上は使えないと書いてあります。
よって、私は有効期限いっぱい、一日一回以上ベローチェに通わなければ、これらのクーポン券を消費し切れません。
アルティメットとは言わないまでも、いっぱしのベローチェファンであることは間違いないでしょう。

…ドトール行きてぇ。